こんな人にお勧め
- SF好き
- 実験的・前衛的なドラマに興味がある
- 西部劇が好き
- 裸を見るのが好き
こんな人にはNG
- 難しい話は眠くなる
- エロ・グロは苦手
- 単純明快なエンターテイメントが好き
あらすじ
近未来。広大な敷地に西部開拓時代の世界を再現した《ウエストワールド》と呼ばれる体験型テーマパーク。
そこでは《ホスト》と呼ばれる人間そっくりのアンドロイド逹が当時の人間と同じように暮らしている。
高度なA.Iである彼らは自分は人間だと完全に信じ切っていて、農夫、町の人、保安官、賞金首、娼婦・・・等々、運営側の用意したシナリオに従って日々を送っている。
そこを訪れる富裕層の訪問客は、欲望の赴くまま、ありとあらゆる事を行うことが出来る。
保安官の仲間となり正義のヒーローになる者、強盗や殺人を行う者、ホストを相手に肉欲に耽る者・・・全ては客の自由なのだ。
ホストの外見は完全に人間と同じで、銃で撃たれると血を流して苦しみ、愛する者を失うと人間と同じように嘆き悲しむ。
ただし客の人間に危害を加えることは絶対に出来ないようにプログラムされている。
そんなある日のこと、一部のホストが異変を起こし、少しずつシナリオ以外の行動を取り始めるのだった。
登場人物
黒服の男
謎の客。冷酷非道な方法でホスト逹を殺し回る。ある《謎》を追っている。
バーナード
ウエストワールドの優秀なエンジニア。
フォード
ウエストワールドの創設者の一人。
演じるアンソニー・ホプキンスはレクター博士のイメージが強すぎて、どうも最初から「この人は何か企んでいるに違いない」感が出まくっている(実際にそうなのだが)。
しかしハンニバルシリーズに出演していた頃と比べると年齢的に衰えたせいか眼光の鋭さにやや陰りを感じられるが、まだまだ並の俳優よりは存在感を放っているので、ハンニバルシリーズが好きだった人なら楽しめるのではなかろうか。
ウィリアム(左)
ローガン(右)に連れられてウエストワールドに初めて来園した客。
ドロレス(右)
本作のヒロイン的存在のホスト。
テディ(左)
ドロレスの恋人という設定のホスト。
メイヴ
娼館の女将役のホスト。
ヘクター
お尋ね者ホスト。
アーミスティス
ヘクターと行動を共にする女強盗ホスト。
ウエストワールドはこんなところ
入口で美男美女がお出迎え。
町ではホストがクエストを持ちかけてくる。ロールプレイングゲームのように。
広い。とにかく広い。
汽車で一昼夜走り続けても端に到達しない。
町や城塞がいくつもある。全部でどのくらいのホストがいるのだろうか?
馬やバッファロー、小鳥や狼にヘビなど、園内の動物は全てホスト。
戦争に乱交パーティー、
ネイティブアメリカンの襲撃と、何でもあり。
列車強盗にダイナマイト、ガトリング砲だって使えてしまう。
死んだホストはスタッフがこっそり回収して修復する。
コントロールセンターでは客の行動を監視。
日本の配給会社さん、人形にまでボカシをかけなくても・・・
耽美的にして退廃的な物語
こりゃまた凄いドラマを作ったもんだ。それが最初の正直な感想である。
実験的な要素の強い構成のドラマであり、それに大金の制作費を投じることの出来るアメリカのTV界は懐が深いとつくづく思う。
原案は1973年のアメリカ映画。私は子供の頃に観たことがあるのでぼんやりと覚えているのだが、この元作品から舞台設定を借りているもののストリーは大きく異なっている。
本作はアメリカでの評価が非常に高く、10点満点で9点くらいの平均評価なのだが、それは自分逹のルーツである西部開拓時代をモチーフにしているから補正が入っていると考えるべきだろう。西部開拓時代に思い入れのない日本人だと、もう少し評価が下がるのではないだろうか。
手に汗握るサスペンスやアクションシーンがあるわけでも、心を揺さぶられる深い感動があるわけでも無い。寝ないで続きを観たくなる中毒性があるわけでも無い。しかし、静かに心を引きつける何かがある。そんなドラマだと思う。
物語は複数の登場人物のエピソードが平行して進行する。現在のエピソードと過去のエピソードが複雑に絡み合うが、どれが現在でどれが過去のエピソードなのかを視聴者が知るのはシーズン終盤になってからだ。
特筆すべき点はいくつかある。まずは、俳優陣の演技の素晴らしさ。特に本作のヒロインとも言えるドロレス(演:エヴァン・レイチェル・ウッド)の演技が凄い。
エンジニアの命令で瞬時に感情をオンオフしたり、笑顔から一点して鬼神の形相になったりと、まるで本物のホスト(アンドロイド)がそこにいるかのようだ。
しかも、フルヌードとまではいかないが大胆な露出をしているシーンもある。
(日本のドラマの役者にここまでのプロ根性はあるだろうか?)
そして、舞台となるウエストワールドの広大なロケーション。大掛かりなセット。細部まで手の込んだ小道具。視聴者はウエストワールドに本当に迷い込んだかのような没入感を感じることだろう。《西部開拓時代》への没入感では無い。虚構の世界である《ウエストワールド》への没入感である。
難点について書くなら、まずは間延びした展開だろう。うまくまとめれば5〜6話くらいに収まりそうな内容を無理に10話まで伸ばしている感じがする。特に序盤から中盤までは世界観の紹介に主題が置かれているのでやや退屈かもしれない。
ウエストワールドの中では訪問客は絶対に死なないので、例えば黒服の男や新参客ウィリアムのエピソードでは、派手なガンファイトが続いたり爆発で(ホストの)手足が吹き飛んだりしているのに緊張感が全く無いという不思議な展開となる。例えるなら、もの凄くリアルなゲームの実況動画を観ているようなものだ。
しかも感情移入できるキャラがいないので、視聴者は俯瞰的に観ることを余儀なくされる。
なにしろ、人間側の登場人物は主に、
「隠し事をしていて何を考えているかわからない者」
「出世と名声のことしか興味が無さそうな会社幹部・エンジニア」
「いかにも雑魚のスタッフ」
の3タイプしかいないと言っていい。
一方、ホスト側には純粋な心を持つヒロインなど魅力的なキャラはいるものの、何度も死んでその度に記憶がリセットされて生き返るので感情移入は難しい。
唯一の感情移入の受け入れ先は第2話から登場する、新参客にして心優しい青年・ウィリアムになるのだろうが、それも、彼の心が荒んでいくまでの間だけだ。その後、視聴者は再び俯瞰的に観ることを余儀なくされるだろう。
そして物語は中盤から大きく動き出す。疑問を抱き始めたホストの出現。園内での殺人。
謎や伏線の引っ張り方はどことなく浦沢直樹の漫画に似ていると言えばいいだろうか。後でわかってみると実は大したことの無かった《謎》を、上手いこと引っ張りに引っ張っている、あの感じだ。
そしてシーズン最終回の第10話で、ある《謎》が解けた時、視聴者はどのエピソードが何時のタイムラインだったのかを知ることになる。
この時点までにあなたは、ホストがプログラムを書き換えられただけで別人にように豹変することを知っているはずだが、ここで新たに、人間だって同じくらい変わりえるのだという事を知り驚くことになるだろう。むしろ、変わってなかったのはホストの心、思いだったのだ。
そして最後の最後に、シーズン2に続きますよ、本番はこれからですよと言わんばかりのフィナーレが待ち受けている。
尚、最終話はエンドロール後におまけ映像があるので最後まで観ることをお勧めしておく。
データ
原案
マイケル・クライトン
製作総指揮
J・J・エイブラムズ ジョナサン・ノーラン リサ・ジョイ ジェリー・ワイントローブ
監督
ジョナサン・ノーラン
脚本
ジョナサン・ノーラン リサ・ジョイ
出演
アンソニー・ホプキンス エド・ハリス エヴァン・レイチェル・ウッド ジェームズ・マースデン
タンディ・ニュートン ジェフリー・ライト ジミ・シンプソン
余談
第6話で「変態行為でもしてたのか」と字幕にあるシーン、英語でもHentai thingと言っていたので笑った。ヘンタイもすっかり国際語になったものだ・・・。でもあの場にいたホストには意味が通じてないよな。