空前絶後という言葉がぴったりだろう。
架空の世界の一つの大陸の一時代をドラマで完全再現してしまった大作である。
各シーズンを観た人の感想はこんな感じではないかと思う。
シーズン1…「なんかつまらないなあ。」
シーズン2…「あら、なんか面白くなってきたかも。」
シーズン3…「えええええええええっ?!(阿鼻叫喚)」
シーズン4…「おおおおおおおおっ!!」
シーズン5…「えええええええええええええええええっ?!」
シーズン6…「よっしゃあああああああああああああっ!!」
忠告しておくが、これから観る人は、絶対に他のネタバレサイトやYouTube等を見てはいけない。
予想外のストリー展開が本ドラマの売りの一つなので、先に知ってしまうと間違いなく面白さが半減する。
最近はあらすじを書くことがレビューだと勘違いしているネタバレサイトが非常に多いが、当記事では出来るだけネタバレ無しで本ドラマの魅力を伝えてみたいと思う。
あらすじ/3つの物語軸
舞台は架空の中世ヨーロッパ。
いわゆる剣と魔法の世界だが魔法の存在感は薄い(少なくとも序盤は)。
ロード・オブ・ザ・リングやロールプレイングゲームに出てくるような派手な戦闘魔法は出てこない。
戦闘はあくまで剣や弓、槍が主体だ。魔法はどちらかというと脇役的な存在ではあるが、物語が進むにつれ大きな役割を果たしていく。
物語は次の3つのエピソードが平行して進み、やがて交差していく。
① 七王国によるウェスタロス大陸の支配権を巡る宮廷陰謀劇と戦乱。
エダード・スタークは王位継承者について驚愕の事実を知ってしまう。
王都キングズ・ランディング。
② ホワイト・ウォーカー(蘇った亡者)の軍団から七王国を守ろうとする大陸北部の《壁》での攻防。
北の蛮族との攻防
ホワイト・ウォーカーと亡者の軍団。
③ 東のエッソス大陸に亡命して何もかも失ったターガリエン家の若い兄妹が王座奪還を目指すサクセスストーリー。
ターガリエン兄妹
遊牧民ドスラクの族長カール・ドロゴとの政略結婚
卵から孵化したドラゴン。今後、大きく成長するのだろうか・・?
大陸には数百年に一度の冬が訪れようとしていた(この架空の世界では夏と冬は不定期に何十年も続く)。
古い言い伝えでは冬と共にホワイト・ウォーカーがやってくるとされている。
これはゾンビのようなものだが、ゾンビと違って走ることが出来るし武器も持っている。そして何者かに操られて組織的な軍団として行動する。
ホワイト・ウォーカーに殺された者もまた、ホワイト・ウォーカーとして蘇る。
大陸が冬を迎えてホワイト・ウォーカーの大群がやってきたら人類そのものの危機なのだが、各王国は内乱に明け暮れており、とても一致団結して迎え撃つムードでは無い。
ホワイト・ウォーカーを最後に見た人間はもう何百年も前に死んでおり、存在そのものを信じていない人も少なくないのだ。
登場人物
登場人物が多いのでとても全部は紹介しきれないが、序盤は主要人物の家族関係を覚えるまでがややこしいので、まとめてみた。
スターク家
【父】エダード・スターク(通称ネッド)。スターク家の当主。
【母】キャトリン・タリー・スターク。エダードの妻。
【長男】ロブ・スターク。
【長女】 サンサ・スターク。
【次女】アリア・スターク。彼女たちもまた、運命に翻弄されることとなる。
【次男】ブラン・スターク。彼には第1話でいきなり悲劇が・・。
【三男】リコン・スターク
ジョン・スノウ。エダードの落とし子(妻以外の女性との間に授かった子)。
北の壁を守る冥夜の守人に志願する。
ベンジェン・スターク。エダードの弟。
冥夜の守人の哨士長。
シオン・グレイジョイ。グレンジョイ家の長男だが、幼少時にエダードによって人質とされ、スターク家の子らと一緒に育てられた。
バラシオン家
【王】ロバート・バラシオン。七王国を束ねる王。昔は戦場で活躍したらしいが、今はどうみてもただのアル中エロ親父である。
【王妃】サーセイ・バラシオン。ロバートの妻。ジェイミー・ラニスター(後述)の双子の姉。
【王子】ジョフリー・バラシオン。ロバートの長男。そのイケメンルックスでサンサ・スタークのハートを掴む。
ラニスター家
【父】タイウィン・ラニスター。西部総督にして優れた指揮官である。
【長男】ジェイミー・ラニスター。王妃サーセイの双子の弟。
【次男】ティリオン・ラニスター。小人症にして頭の良い人物だが、家族から疎んじられて酒と娼婦に溺れている。兄のラニスターだけが彼の理解者だ。
レビューと感想
シーズン6まで観た時点でのレビューと感想。
先に減点項目について書いておこう。
シーズン1だけはつまらない
シーズン1だけはつまらない。これは登場人物や世界観についての説明を丁寧にしているからなのだが、そのために物語の流れがスローテンポとなっている。
正直に言うと私もシーズン1だけは途中で眠たくなり、「これってもしかしてつまらないドラマでは?」と思った。
シーズン1は王家の間のドロドロした権力闘争の話なので、我々のような庶民からしてみれば「勝手にやってれば?」という感想になってしまい、どうしても感情移入するのが難しい。派手なアクションシーンもほとんど無い。
多くの日本人視聴者がシーズン1で脱落していることだろう。実にもったいない。
しかしどうかシーズン2の中盤まで・・・出来ればシーズン2後半まで見てから判断して欲しい。
以降は話が急展開し、登場人物も増えてドラマのスケールが広がる。
セックスシーン多し
もう一つの減点項目、それはセックスシーンが多すぎることだ。
「それってプラス要因では?」と男性諸氏は思うだろうが、そうでもないのだ。
アメリカのドラマなのでセックスシーンが洋物AVのようなのだ。日本人がエロスに求める恥じらいや奥ゆかしさといったものが欠落しているので、日本人が見てもあまりエロスを感じない。
日本のドラマであれば、男同士のシーンであっても恥じらいの表現を織り交ぜてることだろう。しかし本作では男女でも男男でも、出会って惚れたらベッドで即アクセル全開だ。
そして・・・いや、これはプラス要因かもしれないが、同性愛や近親相姦などのタブーにも積極的に挑んでいる。実際、洋の東西を問わず昔の王家ではそういう事が多かったのだろう。
間違っても本作を家族で観てはいけない。きっと気まずい沈黙が訪れるだろう。
とはいえ、多くの役者が体を張って美しい肉体を曝け出しているのは素晴らしい。
文字通り一糸纏わぬ姿を。それも脇役では無い、主役級の俳優たちがだ(残念ながら日本版ではボカシが入るが)。
演技力にやや難が・・・
登場人物が多いので仕方が無いのかもしれないが、演技力の高い俳優とそうでない俳優が混在している。
あるいは、脱げることを優先したキャスティングの弊害かもしれない。
そのため、本来ならもっと緊張感や感動があってもいいはずのシーンがそうなっていなかったりする。
字幕や吹き替えであっても顔の表情の演技力というものは伝わるものだ。
しかし演技力の素晴らしい役者も少なくないので安心してほしい。個人的には、ティリオン役、シオン役、そしてジョフリー王子役の子役は演技が輝いていたと思う。
面白いことに、主人公サイドの人物よりも、サイコパスな悪役の方がリアルな熱演をしていたりする。
ここまでは良くなかった点について書いたので、次に良かった点について書いてみよう。
群像劇の魅力と予測不能なストリー
群像劇の魅力が詰まっていると言っていい。
本命の主人公だと思っていた人たちが悲劇に見舞われ退場していく中、それまで端役だと思っていた人物が決死の覚悟を見せ物語を主導していく。
時には、それまで人間のクズだと思っていた人物が成長して人の心を動かすようになる・・・。
誰が死ぬのか、誰が最後まで生き残るのか全くわからない。完全に予測不能。
それも単に演出上の奇をてらって死なせているのでは無い。全てには原因と結果があり、自らの選択の代償として滅んでいく。
一つだけ言えるとしたら、いい奴は真っ先に死に、悪い奴も死に、世渡り上手な奴だけが長生きするということだろうか。まるで現実世界のようである。
また、登場人物が重大な選択をする場面で、視聴者に「私だったらこうするのに・・」と考えさせる作りになっているのも好感が持てる。
登場人物が多いので、一人一人を深く掘りさげてリアルに描くことを諦めたのか、デフォルメした描写の人物が多い。もちろん全員では無いが。
例えば某王子。これがまた一歩間違うとギャグ漫画になりそうなほど残虐でワガママな暴君なのだが、彼の一挙一動に観ている側はハラハラすること間違いない。しかし日本の隣の国に似たような3代目がいるのを見ると、あながち非現実的だとは言えないだろう。
信用できない人物が見るからに信用出来なさそうに描かれるのもデフォルメの一例だ(現実世界では信用できない人ほど誠実な人物を装うものだが)。
そういったこともあり、リアルで深みのある人間ドラマを求めている人にとっては少し物足りない。
しかし中世ファンタジーの世界にリアリティを求めても意味は無いので、エンターテインメントとして割り切るのが正解だろう。
映画並みのスペクタクルシーン
戦争シーンなどはシーズンを重ねるごとに映像の迫力が増していく。例えばシーズン6後半の合戦シーンなどは単体のハリウッド映画の域だ。
例えるなら中世版のプライベートライアンといったところか。空から降り注ぐ弓、突進してくる騎馬隊、崩れ落ちる馬、体からあふれ落ちる臓器・・。
この戦闘シーンを観た後でもう一度シーズン1の戦闘シーンを観ると「あれ?」と思うことだろう。だからどうか、シーズン1がイマイチだと思ってももう少しだけ我慢して見続けて欲しい。
よく歴史ドラマや戦争ドラマでは、頭のいい主人公が策を練って敵を罠にはめるというパターンがあるが、本作はその逆だ。愚直な主人公がずる賢い敵にまんまとしてやられるケースが多い。
だからこそ最後まで気を抜けないし、そこから後には最高のカルタシスが待っている(かもしれない)。
字幕版と吹き替え版について
本作には字幕版と吹き替え版があるが、個人的には字幕版をお勧めしたい。
吹き替え声優が良くないというわけではないのだが、時々、意味のわかりにくい台詞がある。
例えば「きょうおうをころした」「あのいんぷめ」といった台詞だ。
これらは字幕版で見直して初めて「狂王」「小鬼」であることがわかった。
他にも、例えばシーズン6後半で、ある人物の名前の由来が明らかになるシーン。
吹き替え版でも工夫して日本語の言葉の響きがその名前に似るように努力しているのだが、微妙にニュアンスが変わってしまっている上に、ちょっと無理があるように思う。
エモーショナルなシーンだけに興醒めしてしまわないか心配だ。
配信について
定額見放題ではhuluが独占配信中。
Amazonビデオでも有料で配信中。
シーズン7についてはAmazonビデオの有料配信のみとなっているが、huluでも半年遅れくらいで無料配信されると思われる。
※2017年10月現在。