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この記事はシーズン1の重大なネタバレを含んでいます。
まだシーズン1を観ていない方は シーズン1の記事 をご覧になってください。
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ざっくりと
田上は《連合国が勝っていた世界》に迷い込む。(つまり、私たちの世界だ。)
ついに憲兵隊に包囲されるジュリアナ。
日本には“金継ぎ”という技法があって
壊れた物をくっつけ 繋ぎ目を金粉で飾る
不完全でも美しくいられるの
そう語るジュリアナの背中にも金継ぎのような大きな傷が。
(でもジュリアナさん、この後、話し相手に酷いことをしてしまうのであった)
田上は《連合国が勝っていた世界》で、その世界の自分にとっては重要な意味のあったマグカップを金継ぎで修復する。
劇中で金継ぎが意味しているものは・・?
また、その世界での田上とジュリアナの意外な関係が明らかになる。
スミス大将の長男トーマスの病状は?
ジョーは自身の出自を知り決意を固める。
ジョーに近づく謎の女性ニコル。シーズン2の新キャラ。エロス担当。
木戸はついにスミスに接触する。密室で二人が何を語りあったのかはカットされているが、想像するのは難しくない。
セットにせよCGにせよ、ナチス側は何もかもが豪華絢爛に描かれる。
リドリー・スコット節が炸裂といったところだ。
ナチスの作戦司令部。
一方、日本軍の作戦指令部。見るからに安っぽいが、現在の日本の官庁とそれほど違わないから否定は出来ない。
このシーンでは哀しいことにゲートのバーを衛兵が人力で開閉している。
このようなナチスと日本の対比は、戦争になったらナチスが圧勝しますよと視聴者に印象づける狙いがあるのだろう。
世界の終焉が秒読み段階に迫る。
レビュー
シーズン2の中盤から物語は一気にスケールアップする。
シーズン1が好評で予算が増えたのか、映像面でも若干グレードアップしている。
シーズン1ではスミス大将の長男トーマスの難病が明らかになった。
このままだとナチスの優生政策により安楽死させれられることになる。例え将校の子息であっても。
スミス大将は息子を守るための策を練る一方で、ナチス上層部に渦巻く謀略にも立ち向かっていかないといけなくなる。
大日本帝国を核で先制攻撃し、全世界を支配しようと考えている勢力と。
息子の難病のことがナチスに知られたら彼は殺されるだろう。
それでもスミス大将はナチスに忠誠を誓い続けるのだろうか?
ジュリアナはもう1つの『イナゴ身重く横たわる』フィルムに写っていた男を追ってナチスの支配する東側に潜入する決意をする。
その男こそ核戦争を回避する鍵なのだと《高い城の男》は言うのだった。
しかしそのジュリアナは、日本からは指名手配され、レジスタンスには命を狙われ、ナチスの監視対象になり、もうどこにも安全な場所が無いという状況に追いやられる。
レジスタンスの一員となったフランクは爆破テロを計画する。妹とその子供たちを木戸に殺されて復讐心に燃える彼だったが、実行直前に爆破目標の建物で同じような親子連れを見かける。
前回の記事でも少し書いたが、この構図は完全に、家族を殺されたイスラム教徒が自爆テロ犯になる経緯と同じである。
スミス・田上・木戸・フランク逹が組織の歯車という立場で時には板挟みになりながらも自分の信じる正義を成し遂げようとするのに対し、ジュリアナはどの組織のためでもなく、自分の周囲の者を助けたいという一心から行動する。
良く言えば純粋、悪く言えば近視眼的だと言える。相変わらず考えて行動しているとは言い難いがシーズン1よりは少しマシになったようだ。
完全なる正義も、完全なる悪も存在しない世界。今まで悪だと思っていた敵より、《さらに邪悪な敵》が現れる。
しかしその《さらに邪悪な敵》にも、他の登場人物同様、家族や悲しい過去があり、温かい一面があることを知る。
そしてシーズン2では登場人物の誰もが手を汚すことになる。ジュリアナも、優しかったエドも。温厚な田上大臣でさえも、将軍の《バス計画》を拒めなかった時点で市民の殺傷に手を貸したのと同罪だろう。
では、善悪の価値観は全て相対化されうるのだろうか?
何が正義で何が悪なのかが混沌とした世界において、それでも我々は、最終戦争を回避しようと行動する者たちを、あるいは、例えナチス将校の子供であっても助けようとするジュリアナを、応援せずにはいられないだろう。
彼らの行為は報われるのだろうか? ジュリアナには救いが待っているのだろうか?
それはラストまで観て各自で判断していただきたい。
ヒロインをもっと魅力的に描き、シナリオと設定・考証の細部を詰めていたら100点満点もあり得たと思うので、そこが残念。
制作発表されたシーズン3への期待が膨らむが、ここで止めておいた方がいいという気もしないでは無い。
シーズン2終盤の緊張感は並々ならぬものがあったが、果たしてそれを超えるものを作れるのだろうか?
もちろん本音では作って欲しいと願っているし、最後に自ら連行されていった《彼》を救って欲しいのだけど。
《金継ぎ》の意味するものとは?
『日本には“金継ぎ”という技法があって
壊れた物をくっつけ、繋ぎ目を金粉で飾る。
不完全でも美しくいられるの』
金継ぎが何を暗喩しているのか。
気がついた方も多いと思うが、もしまだわからなければ、オープニングの映像をじっくりと観て頂きたい。
田上のマグカップ、ジュリアナの背中を頭に入れながら。
もうわかったはずだ。その《壊れたもの》の《修復》こそが、シーズン3以降で物語の目指すものになるのだろうか。
(それはそうと、いらすと屋さん凄すぎです)
ちょっとだけシーズン3を予想
最終話の終盤で彼が《あの人物》の所有していたフィルム庫に通されるシーン。あそこは山の中にある古城だ。
ということは、もし彼があそこの管理責任者になるなら、ドラマタイトルの意味する《高い城の男》とは彼のことになるのだろうか?
愛する者を失って氷の心となった彼が、フィルムの力で権力を掌握し悪のラスボスとして覚醒する。そんな展開になったらどうしよう。